2002年8月、日本精神神経学会が精神分裂病を統合失調症へと名称を変更した。厚生労働省もこの病名を採用している。以来、この名称は広く認知されるようになった。
病名が変更されて一般に知られるようになったとはいえ、統合失調症の本質を理解することは容易ではない。
ICD-10が規定する統合失調症の概念を要約すると以下のようになる。
統合失調症は、思考と知覚の根本的で独特な歪み、不適切あるいは鈍麻した感情によって特徴づけられる。ある程度の認知障害が経過中に進行することはあるが、意識の清明さと知的能力は通常、保たれる。
統合失調症では、正常な人間に備わっている個性・独自性・自己方向性といった感覚を与える根本的な諸機能が障害されている。
きわめて個人的な思考、感覚や行為が他者に知られたり、共有されたりしているように感じることがある。
自然あるいは超自然的な力が奇妙な方法で患者の思考や行為に影響を及ぼすという妄想が発展することがある。
幻覚、特に幻聴が見られ、患者の行動や思考に注釈を加えることがある。
知覚障害も認められる。色彩や音が過度に生々しく感じられたり、質的に変化して感じられたり、日常的な物事の些細な特徴が、対象全体や状況よりも重要なものに見えたりすることがある。
発病初期には困惑も多くみられる。そのために患者は日常的な状況に過ぎないことを自分に向けられた悪意と確信する。
特徴的な思考障害では、ある概念全体の中で、正常な心理活動では抑制されている末梢的で些細な事柄がその状況と関連した適切なものにとって代わる。そのために思考は漠然として不可解で曖昧なものとなり、理解できなくなる。
思考の流れが途切れたり、それてしまったりすることがある。思考が何かの外的な作用によって奪取されると感じることもある。
気分は浅薄さ、気まぐれさや不適切さを示す。
両価性と意欲障害が緩慢さ、拒絶、昏迷、緊張病性症候群として現れることがある。
発病は急性で重篤な行動障害を伴っていることもあれば、潜行性で奇妙な考えや振る舞いが徐々に進行することもある。
ここまで読まれた方は「群盲象を評す」の寓話を思い出さないだろうか?