私たちは物事を判断するときに自分では客観的、冷静に判断しているつもりでも、実際はその時の気分の影響を受けている。あばたもえくぼに見えるのは、その人に好意を持っているからであり、釣り落とした魚が実際より何倍も大きく思えるのは痛惜の情に駆られるからである。
神経症の人は自分の症状に関することを実際以上に重大に過大にみてしまう。不安な時は感受性が高まって、自分に不利と思われることが実際以上に強く感じられる。これには自己暗示の作用が関係している。
不安神経症の人には、心悸亢進発作が起こりはしないかという予期恐怖が激しく、前の苦しい発作を連想したりすると、また起こるのだという自己暗示にかかって不安がいっそう強まり、そのために心悸亢進が誘発されることになる。