炭酸リチウムは気分安定薬に分類される。
炭酸リチウムは、1949年、オーストラリアのJ.F.J.Cadeによって抗躁作用のあることが発見された。その後、 いわゆるリチウム療法がデンマークのM.Schouによって確立され、さらに諸外国において臨床研究が積極的に 行われ、その効果が実証されたことにより、各国で次々と医薬品として使用されるようになった。
我が国では、1968年頃から躁うつ病をはじめ、情動疾患を伴う精神病に対する治療成績が報告され、従来にない抗躁作用像が明らかになるにつれ、特に精神科から製品化の要望が強まった。大正製薬株式会社はこのような医療ニーズを重視し、開発に踏み切り、商品名リーマスとして1980年に発売に至った。
市販後の使用成績調査結果から、血清リチウム濃度測定等の適切な管理下で使用する限り有効かつ安全な薬剤であることが示唆されている。なお、炭酸リチウム錠はWHOの必須医薬品モデルリスト(WHO Model Lists of Essential Medicines)に収載されている。
炭酸リチウムは中枢神経系におけるNA作動系、DA作動系、5-HT作動系において、多くの作用が複合的に関連して作用するものと推測され、自発運動抑制作用(マウス)、興奮性薬物に対する拮抗作用(マウス)、条件回避反 応抑制作用(ラット)、闘争行動抑制作用(マウス)が報告されている。
保険適応は躁病、躁うつ病の躁状態である。適応外として双極性障害の再発予防、治療抵抗性うつ病に用いられる。