自己を外敵から防衛する働きはすべての生物に共通する本能である。外的とは自然と社会におけるありとあらゆる不利な事象である。自然災害、病原体、人間同士の争い、事故、社会的制約など私たちが自身で防衛しなければならない敵は無数にある。
これら外敵に対して、ただ消極的な防衛にのみ専念していたら、どうなるだろうか?
貝類は身を守るために厚い殻に覆われているが、殻を閉じれば石ころと同じようにヒトやサルに簡単に捕まって食べられてしまう。装甲をむやみに厚くした戦艦は速力が落ちて、飛行機や魚雷の餌食になる。
これと同じことで、かたよった自己防衛は神経症症状を起こしやすくする。病気にかからないことが人生の最大関心事になり、そのために建設的な活動が阻害される。
自己防衛の偏りは外敵ばかりでなく、内敵に対しても行われる。内敵とは頭に浮かんでくるさまざまな想念である。彼らは雑念、よからぬ考え、他人に知られたくない想念、強迫観念が頭に浮かぶことを恐れ、それらを追い払うことに日夜没頭する。
自己防衛にかまけていると、外界の刺激や内心の不安がすべて自分に襲い掛かる強敵のように感じられる。