妄想型統合失調症は世界中のほとんどの国で最も一般的な統合失調症の亜型である。
臨床像は比較的固定した妄想が優勢であり、通常、幻覚を伴う。幻覚は幻聴とりわけ幻声が多い。
感情・意欲・会話の障害および緊張病性症状は顕著でない。
もっとも一般的な妄想型の症状は以下のようなものである。
被害妄想、関係妄想、高貴な生まれである、特別な使命を帯びている、身体が変化したという妄想、嫉妬妄想。
患者を脅したり、患者に命令したりする幻声、口笛、ハミングや笑い声という言語的でない幻聴。
幻嗅、幻味、性的身体的感覚的な幻覚、幻視は出現することはあっても、優勢となることはまれである。
思考障害は急性状態で明らかになることがある。
感情は、通常他の亜型ほど鈍麻していないが、軽度の不調和は普通にみられ、易刺激性、易怒性、恐怖感、猜疑といった気分の異常として出現する。
感情鈍麻や意欲減退のような陰性症状も現れることがあるが、臨床像を支配することはない。
妄想型統合失調症の経過は部分寛解や完全寛解を伴うエピソード性のこともあれば、慢性のこともある。慢性例では多彩な症状が年余にわたって持続しており、はっきりとしたエピソードを区別するのは困難である。
発病は破瓜型や緊張型より遅い傾向がある。